第7回 ありのままの心
◆ 好きと嫌いは、正反対?
小学生のころ、こんな悪ふざけがありました。誰かに「○○ちゃんのこと嫌い?」と質問して、その人が「いや嫌いじゃないよ」と答えたら「あー好きなんだー!」とからかうというものです。嫌いではないのなら好きなんだ、と強引に話を持っていくわけですが、実際には好きでも嫌いでもないという状態もありますし、この理屈は通りません。
それどころか、言葉の意味としては正反対である「好き」と「嫌い」は、心の中では同時にあってもおかしくないものです。彼氏のことを好きな状態で浮気されたとき、「嫌い」になることがありますが、「好き」が消えて「嫌い」がやってくるというようなものではありません。「好き」が残ったまま、それが見えなくなるほどに強い気持ちで「嫌い」がやってくるだけなのです。このように、心の内側には、相反するような気持ちが矛盾なく存在しています。
◆ 別れたい?別れたくない?
例えば彼氏と長く付き合っていて、もうドキドキもしないし別れたい、けれどもなんだか情があって別れられない…という女性がいたとします。そのとき「別れないのだから、結局は別れたくないんだな」というのは、妥当な見解だと言えるでしょうか。それは一面的に捉えたにすぎず、妥当とは言えません。
例えば「別れて新しい人と付き合いたい」というような、アクセルとなるような気持ちがあるとしても、同時に「別れてしまえば心に穴が空いて寂しい」などといったブレーキもあることでしょう。他にも様々なアクセルとブレーキが入り混じっていて、同時に心には存在しています。それを一まとめにして簡単に「別れないのだから別れたくないんだな」とは言えません。
◆ 心の単純化は禁物
心は、真っ白な画用紙があって、そこに絵の具を塗っていくようなものです。青い色を塗ったところに思い切り赤い色を塗ったとしても、青い色が消えるわけではありません。そのとき青い色は下に隠れたり、存在感が小さくなるだけで、消えるわけではないのです。上記のような、別れたいか別れたくないかというような、単純なスイッチではないのです。
人の心を決めつけて「要は男は浮気したいんでしょ」と一色であるかのように言うのも、誤解を生みます。心は、ありのままに、カラフルなまま捉えるように心がけましょう。