校長の恋愛・人生相談室

No.285

鬱病の母親に優しくできない

こんにちは。私は20歳の大学3年生です。母との関係で相談があります。

母は6年ぐらい前からうつ病です。調子が悪いとき、急に感情的になったときに、どう対応したらいいかわかりません。

私はすごく人見知りで、人と話すのが苦手です。また、思いやりがある行動をとることができません。例えば、友人や彼氏が具合が悪いときや、困っているときにどうしていいかわからなくなってしまいます。もっと優しい言葉をかけたり、親身になってあげたいのだけれど、躊躇するというか、めんどくさい気持ちが出てきてしまいます。

これは母に対してもそうです。母には感謝しているし、もっと親孝行もしてあげたいと思っています。でも、感情的になられたり、もっと優しくしてと言われると逃げたくなってしまいます。本人も辛いでしょうし、私があまりにもそっけないので余計に寂しくなるのだと思います。でも母が望むような思いやりのある行動がとれません。

私の意思が弱いせいだとはもちろんわかっていますが、どうやったら少しでも行動に移せるかアドバイスをいただきたいです。無料の電話相談にかけようと思いましたが、それすらためらってしまいました。思い切って相談したのに、適当にあしらわれたら心が折れてしまいそうな気がして誰にも言えていません。どうかアドバイスよろしくお願いします。文面ではあまり悩んでいないように思われるかもしれませんが、本当に悩んでいます。

校長

呑み込まれない自分になること、に尽きるそうだなぁ。この相談は、校長はなーんにも考えることがないんだよな。すごくシンプルな話で、簡単な話。でも解決するのは難しい話。

例えば「自転車で家の前の坂を登ることができないんです。すぐ疲れてしまうんです」と相談されたら、「脚力をつけなさい」ってことになるよな。そういうことなんだ。

鬱病の母親が精神的に調子がよくないとき、君は優しくしたいという思いはあるけれども、心が折れる。なぜなら精神的な余裕がなくて、優しくできるほど充分な器が今ないから。人に優しくするには、精神的な余裕がないといけない。自分がネガティブな気持ちに襲われたら優しくできない。

海で溺れた人を、カナヅチな人とか、波に呑まれていっぱいいっぱいになっている人が助けることはできないよな。安全な場所からとか、充分な泳力などの余裕があってこそ、冷静に救助活動ができる。パニックになった人にはできない。

母親の精神的な調子が良くないとき、例えば君は何か良いことがあってポジティブだとしても、母親の「ネガティブな世界に呑み込む力」のほうが強ければ、一緒に溺れてしまう。そうしたらもう優しくできないんだよな。特に母親の精神状態に君の心は敏感になっているはずだから、すぐに気持ちが沈んで、持っていかれてしまうと思う。君の余裕はすぐに食い尽されて、負けてしまう。

例えば、子供が生まれたときから難病にかかっていて、母親は子供につらい治療をさせなければいけないとする。胸が痛くて苦しくて罪悪感で泣きはらす日もあるだろうけれども、子育てや治療は待ったなしだから、引きずり込まれて泣いてばかりいられないよな。自分は母親だから強くいないと支えられない、と思うだろう。弱る気持ちにムチを打って、常人では想像できない並々ならぬ覚悟で気持ちを保とうとする。

呑み込まれたら優しくできない。だから、心を鬼にしてでも、呑み込まれない位置まで心を離して、自分をしっかり保った上で接しないといけないんだ。それはある意味で残酷だよな。一緒に泣いたり落ち込んだりしてやりたいけれども、そうすると何もできなくなるから、自分を保ったままできる範囲で優しくする。心を取り扱う職業の人はみんなそうだ。でもフリーズして何もできないまま、なんとなく避けるよりは、相手のためになると思う。

もう一つの道は、とことん呑み込まれて、一緒に泣いたり落ち込んだりする、超接近戦だ。それはもう人生を捧げても運命共同体でもかまわないというぐらいの覚悟が必要で、愛の中でも最上級に強い愛があってこそだと思う。でも「親の心子知らず」とも言うし、子供が親にそこまで捧げられないものだと思う。妻が夫に、とか、親が子供に、とかはできるかもしれないけれども、なかなか子供が鬱病の母親と超接近戦で頑張っていくというのは簡単ではないし、それでいいと思う。これから自分の人生を生きるべき子供が、親の精神状態に呑み込まれて翻弄されまくって疲弊しすぎることは、校長はあまり賛成しない(見捨てろとも思わないが)。

ただただ、君は楽しいことをしたり一人になったりして気持ちの余裕を作って、親の精神状態に呑み込まれないよう罪悪感は断ち切って(自分のせいじゃないしこれは仕方のないことなんだと)少し冷静になって、それらをすごく大事にして自分を保った上で、手を差し伸べることだ。そうすると親にあれこれ言われると思うけれども、揺さぶられて呑み込まれないこと。

他にも家族がいるならみんなでケアしていくことも大事だけどな。幸せな出来事が続いたり、投薬や自然回復で、治っていけばそれが一番なんだが。

君は君のできることをしっかりやることだ。呑み込まれない自分をつくること、これに尽きる。

(感想があればこちらへ advice@rennai.ac