どうしようもないときは、どうしようもないこれはNo.92について他の人からの感想の中に質問があったから、それを採用したもの。先に読んでいる人のために簡単に言うと、No.92の人は、すごくつらいことがあったけれども誰にも言えないことで、子供を三人育てているから寝込んでいる暇もない、そういうときに負った傷はいったいどうすればいいんだという質問。

それは実は簡単な話で、どうしようもないんだ。だから大変なんだ。

ほんとに世の中には、見ていられないぐらい追い込まれている人っていっぱいいるんだよな。例えば責任感が強すぎて追い込まれる、すぐ自分のせいにしてしまう、とかそういう心理的な面で追い込まれる人も大変だけれども、状況からしてもう逃げることも寝込むことも許されない、という追い込まれ方をする人もこれは大変だ。例えばすごくつらいことがあったのに、頼れる人も誰もいないし一人暮らしで、待ったなしで毎日苦しい仕事がやってくる、そういう人だっているだろう。そういう、環境が逃げることを許さないような状況のとき、校長ももうお手上げで、状況を受け入れざるを得ないなと思う。あとは少しでも心が楽になるようなことを言えるか、というぐらいしかない。

No.92の人も、あれだけつらいことがあって絶対に心を整理したり寝込む時間が必要なのに、そういうことも出せない子供たち三人の前で、待ったなしで子育てをしなくてはならない。それはどうしようもないことなんだ。

君は「何もかも投げ出してしまう勢いで、じっくり傷を癒すのか、それとも、傷を負った状態でも、なんとか頑張って走り続けるのか」という二択を掲げているけれども、投げ出せるものかどうか、その大きさや、頑張って走り続けるという大変さのバランスによる。

例えばシングルマザーの背負っているものが新生児と乳児だったらどうか。つらいことがありました、全部投げ出すか、なんて選択肢があるかどうか。そこで全部投げ出すってのは子供の命を投げ出すこと、それはすなわち自分の命を投げ出すことよりつらいこと、かもしれない。けれども「つらいことがありました」の内容は、もう癒さなければ死にたくなるようなこと、かもしれない。そんな簡単に「投げ出して寝込むか、なんとか頑張るか」なんて言えないよな（まぁそういうときは国の相談所にまず電話してくれとは思うけれども）。

だから一般論で、その二択から選ぶなんていうのは不可能なんだ。それに、どうすればいいのか、いやどうしようもない、そんなことはたくさんある。どうしようもないこと、理想も方法論も対策も何もあったもんじゃないというのはたくさんあるんだ。

確かにNo.92の人は本当に心配だ。頼る人がいなくて話せる人もいなくて待ったなしの子育てがあるなんて、心配だ。それが全てなんだよな。どうなってしまうのか校長も分からない。そういう、どうにもならない愚痴とか叫びが校長のところにはたくさん来るし、それは心苦しいことだ。

「傷を負った状態で走り続ける時に、気をつけたほうがいいこと等あったら、ざっくりでいいのでよかったら教えていただきたいです」
それは、できれば無自覚ではなく、把握しておくことだな。例えば「本当は傷ついていることも分かっているし、休んだり寝込んだり人に話したりしたほうがいいのも分かっている。けれども今は待ったなしの状況だから、それをしている場合じゃないんだ。今は自分の心を殺してでも生きなければ」とか、心を殺すにしても、その自覚があったほうがいい。無自覚のままだとストレスに倒れる場合でも、自覚があって覚悟を決めた場合には、癒さなくてもしばらく乗り切れることがある。心は修羅のようになってしまうけどな。

悩んでヘコめる時間があるほうが幸せか、悩む暇もなく走り続けなければならないほうが幸せか、分からないけども。どうかな。