自分が好きなアーティスト以外興味が持てない
校長先生、こんにちは。
私は22歳になる大学4年の女です。1つ年下の3年生の彼氏と付き合って1年と少しになります。
恋愛の相談ではないのですが、私にはあるコンプレックスがあって、ついに先日彼氏にまでそのことを指摘されてしまい、とても凹んでいるので、 愚痴ろうと思ってメールします。
私のコンプレックスとは、人から勧められたものを好きになれない、ということです。 私はとあるAというバンドが好きです。10年くらい前にはミリオンセラーを叩き出し、最近は世間一般であまり活動が知られていませんが、ファンを大切に、やりたい音楽をやってるバンドです。私はAが本当に大好きで、15歳の頃から年に1~5回くらいは必ずライブに行っていて、ファンクラブにも入り、デビューしてから14年分のCDをすべて持っ ています。 そして、中学、高校の頃は、そのバンドAについて、熱く語りすぎてしまう傾向がありました。みんなから「Aが好きな人」という目で見られ、若干引かれていたとは思いますが。もちろん、A以外の音楽を全く聞かないわけでは ありませんが、何を聞いてもAと比べてしまい、「これもいいけどやっぱりAが最高!」という結論に至ります。私の音楽に対する価値観は、丸8年変わりません。A以上のアーティストに、出会っていないし、今後も出会えないと思いますし、別にそういうアーティストをあえて探したいとも思いません。 そんな考え方の私ですから、友達が好きな曲にも興味持てないし、ちょっとがんばって興味を持ってCDを貸してもらったとして、まあいい曲だな、と思っても、それを伝えると「本当にそう思ってる?」と言われます。それは、Aの話をする時の私が本当にうれしそうでテンションが高いから、それほどの感情表現ができてなくて、そう言われてしまうんだと思います。このことで、高校の時に友達に「自分の好きなものにしか興味ないよね。そもそも他人に興味なさそう」と言われてひどくショックを受けました。この友達とは今でも仲良くやってますが。
それで、大学ではあんまり「Aが好きだー!」っていうのを出さないようにがんばっていたのですが、やはり隠しきれず、高校までほどひどくありませんが、やはりみんなには「Aが好きな人」と思われています。
大学に入ってからは、他のアーティストのライブにも行ったりして、少しは視野を広げたつもりでいました。それでもやっぱりAが最高だと思っていますが。
彼氏は、私にAのCDを貸してほしい、と言って、CDの貸し借りをきっかけにアプローチしてきました。付き合ってからは、ライブに誘って一昨年の末に行きました。彼氏は「にわかの俺にはついて行きづらかったけど、楽しかったよ」と言ってくれたので、昨年末のライブにも誘いました。彼氏は、Aを好きな私を受け入れてくれていると思って、 付き合う前も付き合ってからも、高校の時のようにテンションを上げてAの話をしてしまっていました。
先日、彼氏と喧嘩しました。今回は話がいろんな方向に飛んでいってお互い昔のこと蒸し返したりして相手を否定し合って不満をぶつけまくって、もはや何がきっかけで、結局なんで喧嘩したのかもわかりませんが。
その中で、彼氏に言われた以下のようなことがグサッと刺さりました。ちなみに彼氏は、音楽に対して「いろんな音楽を探して、聞いて、視野を広げていきたい」という私とは正反対の考えの人で、実際にいろんなマイナーなアーティストを知っています。
「お前は考えが凝り固まりすぎ。(他のライブとかも行くし、と反論したら、でもメジャーな人ばっかりじゃん、探そうとする姿勢が見られないと反論され。。。)この前のライブも、ノリを強要する雰囲気で、正直引いた。俺が貸したCDも、いい曲だねとか言ってたけど、正直興味ないのが見え見え。Aのライブでのお前が今までで一番テンション高くて、嬉しそうで、俺とのデートでそんな姿見せてくれたことない。別にAが好きなのも、好きな音楽だけ聞けばいいじゃん、っていう価値観も悪くないとは思うけど、俺はそれって寂しいと思う。世の中にはまだまだいい音楽がたくさんあるのに。新しいものとか、変化を受け入れる姿勢がないんだね」みたいなことです。
なんでそんな私の価値観や好きなものを否定するの!?と言ったら、否定してるわけじゃない。ただ、俺は寂しいなと思うだけ、と言われました。
「そっちこそ、私にとってのAほど深くはまれるアーティストがいなくて寂しいね!」と言い返せればよかったかな、と家に帰ってきてから思いつきました。
結局私は15歳の頃から何も変わってないんだ、と思ったら凹みました。
よく、「映画でも漫画でも、面白いよって聞いたら、そうなんだ、と流すのではなく、まず触れてみるとコミュニケーションはうまくいく」という話を聞くのですが、こういうことって、授業の課題や部活の練習といった「絶対やらなきゃいけないこと」に比べると「やらなくてもいいこと」になるわけで、どうしても後回しにしてしまいます。
あと、CDを全部揃えたり、ライブに何回も行ったりという、時間と労力を、また他のアーティストに1から費やさなきゃいけないかと思うと気が遠くなります。(Aに対して、労力とは思ってませんが。好きだから、CDを買って、ライブに行ってたら、気がついたら8年経っていたという感じです)
わかってるんです、これから社会人になるにあたって、こんな柔軟性のないやつはダメだと。でも、好きになれないものはなれないんです。
努力が足りないですよね。少なくとも、高校での失敗はするまいという意識を大学では持っていたはずなのですが、それじゃダメでした。
物事への興味って、どうしたら持てるでしょうか?
べつに無理して興味を持つ必要はないと思ううーん読んでいると謎の感動があるな。一連の出来事がすごく良く分かるし、そういえばそういう心理があったけれどもすっかり年齢を重ねて忘れてたから、なんだか若返ったような気持ちになったぞ。
君の気持ちも彼氏の気持ちも、よく分かる。そのAってのが何なのか、校長にこっそり教えてくれ。
これは本当に面白いなぁ。
音楽に限らないけれども、例えばある曲を聴いて本当に素晴らしくて感動してファンになったりその曲が大好きになったりすることはあるよな。それと、最初は興味がなかったけれども、聴き込んでいくと好きになったり、何度か良い場面でそれを耳にすることで好きになったりすることがある。またはアーティストも、そのアーティストが素晴らしくて大好きになることもあるし、ファン活動をすることでどんどん好きになることもある。
誰もが感動するような良いものは、音楽だったら語り継がれる万人にとっての名曲ということになるだろうし、そういう曲はごくわずかしかない。そういうのは誰かにお勧めするまでもなく魅力を語るまでもなく、すぐに伝わってしまう。でもそれ以外の、聴き込んだから好きとか、追いかけたからもっと好きになったとか、そういう部分が大きくなってくると確かになかなか他の人には響かないよな。
我々は、自分を多く費やした対象を、なかなか嫌いになれないし、ますます好きになったりこだわりやすいんだ。たくさん世話をしたペットは他のペットよりかわいく見えるし、たくさん聴き込んだ曲は他の曲より好きになる。もちろん味わいが出てくる、良いところがより深く分かってくる、とかもあると思うが。
聴き込んだから好き、追いかけたから好き、の部分(個人的に心の中で上積みされた評価)がどれだけ大きくなるかで、他の人に共感してもらえるかどうかが変わってくるよな。君は相当にそのアーティストが好きなようだし費やしたようだから、もう他の人を置き去りにしてしまうほどだし、他の人はポカンとしてしまうんだと思う。聴いてみても「まぁいいとは思うけど、そこまでハマらないなぁ」と思われてしまう。共感できないと、心が響かないわけだから、酒飲みのテンションについていけないしらふの人みたいにどんどん引いてしまうこともあるだろう。
そして、周囲を置き去りで何かに没頭してる人を見るってのは、実は他の人にストレスを与えるんだよな。例えばしらふなのに盛り上がっている大学生の飲み会を見るとか、例えば独り者なのにクリスマスでみんなテンションが高いとか、例えばなんだか知らないことで友達らが超ウケてるとか。何かに没頭して幸せそうな状態って価値が高いから、そのギャップで強い光に対して強い影ができるように周囲が不安になったり寂しくなるし、自分とは関係の無いところに気持ちが向いているという意味で彼氏からしても寂しくもなる。だからすねたくもなるんだよな。もっと自分のお勧めアーティストに、いや、自分の好きなこととかに、いや、自分に、関心を持ってくれよと。自分の影響を受けてくれよと思う。
とはいえ、べつに無理して他のアーティストに興味持たないようにしてるわけでもないし、他のアーティストを無理して好きになる必要もない。それはそれでいいと思うけどな。少なくとも自分の好きなアーティストを押しつけたりはしないだろう?まぁ自分が好きなものが何なのかどんななのか知ってほしいっていう気持ちはあるとは思うが。
他の人も、自分の好きなアーティストを聴いてほしいっていうより、自分が好きなアーティストがどんななのかに興味を持ってほしい、つまり自分の好みに興味を持ってほしい、自分の話を聞いてほしい関心を持ってほしいってのはあると思うんだよな。君にだってあるはずだ。私はこのアーティストの大ファンなんだって、それは知ってほしい、みたいな。そこなんだよな。音楽の趣味を他の人に合わせるんじゃなくて、そこに興味をもっと持ってほしいんじゃなくて、その人がそれを好きな気持ちとかを含めて自分以外の人に関心を持ってほしい、尊重してほしい、と。「まぁ自由だしいいんじゃない?好きにすれば?」じゃなくて。「あぁそれ好きなんだね。どういうところが好きなの?そうなんだぁ。ほうほう、なるほどねー」って思ってほしい。君はすぐ「そうなんだぁ。ふんふん。で私はAが好きでね」っていきそうだから怖い。
まぁ校長も人から勧められたものはまず受け入れない性格なもんでな。最近は意識して、勧められたものはまず保留、自分から自分のタイミングで触れてみて、めちゃくちゃハマる、ということが多い。だからまぁ君の気持ちはよく分かるんだ。でもやっぱり彼氏の気持ちもよく分かる。
それにしてもAが気になる。何度も言うが、こっそり教えてくれよな。Aがなんなのか。