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校長の深い話

校長

恋愛に関する知識、人生哲学、心理解説、などを交えて深いところに触れていく授業である。きっと多くの人が、最初は難しいと感じるだろう。他の回で言っていることを踏まえて話が展開されることもあるから、分からない部分も多々出てくるだろう。しかし同じ内容も表現や例えを変えながら何度も説明するから、徐々に慣れていくと思われる。

生徒諸君のコンプレックスに触れる内容については、納得のいかないことや、すんなり理解できないこと、受け入れがたいこともあるだろう。受け入れがたい内容は、無理して受け入れようとしなくてもいい。心には、それを受け入れるべき時期、タイミングがある。また、頭で分かっていたことが、後で体験して「実感として分かる」ということもあるだろうから、読み流すだけでも意味がある。

少なくとも「恋愛の基礎ドリル」は先に読んでおくように。是非、本校の他の教材と併用して理解を深めてもらいたい。

校長

20xx年xx月xx日【難しさ:★☆☆】
テーマ「風船」

まずは問題からである。下記の事例を読んで、これについておよそ妥当なことを言っているものを一つ選んでくれたまえ。

とある女は、半年間の片想いの末に、勇気を振り絞ってクラスメイトの男に告白したのだが、彼には遠距離の付き合っている人がいるということが判明した。だが彼は「2カ月待ってほしい。2カ月考えたい」と言うのである。というのも、2カ月後にその付き合っている女が留学から帰国して、今後について話し合いを持つことになっているから、ということである。

彼女はそれを聞いて納得したが、数日後、彼に「私のことは忘れてください。彼女とお幸せに」とメールしたのである。自分は彼にふさわしくないとか、彼ら二人に申し訳ないとかいろいろよぎって、「とにかく終わらせなければ」と思ったのであった。

深い解説

これが正解(選択肢3)。

彼女は彼に長いこと片想いをしていて、勇気を振り絞って告白したのである。それはそれは怖くて仕方がなかったと思われるが、そこで彼女は、彼が「彼女付き」であることを知った。ショックを受けたろうし、恐る恐るの告白だけあって、自信がなくなったことだろう。

それに、告白だけでも勇気が必要なのに、2カ月後に下される審判を待つなど、怖くて仕方がないはずである。その2カ月間、精神の荒波に打ち勝って耐えたとしても、やっぱりあなたとは付き合えませんと言われるかもしれない。彼女はそれをじっと待つほどの豪胆さまでは備えていなかった。自分から終わらせる理由も定まっておらず「とにかく終わらせなければ」といった感じである。

人の心を持たず冷静に状況を分析するなら、そのような話し合いを二か月後に持つという二人は、遠距離でだいぶ心が遠くなっているのだろうし、関係性が危ういのかもしれない。二カ月を待たずして破綻することも有り得るし、あくまで人の心を持たなければだが、待つことにたいした損はないのだから待てばいいのである。だが、やはり人の心を持つ彼女だから(当たり前だが)、なかなかそのようには考えられなかった。

彼女は、いつ割れるか分からない風船を前にして、いてもたってもいられない気持ちになったのである。そして自ら割った。彼に割られて心臓がやられるよりは、自分で割ったほうが、タイミングも掴めるし覚悟もできるし2カ月も恐怖に打ち震える必要がないからである。

割れるかもしれない風船を目の前にすると、彼女のように自ら割る人もいれば、耳を塞いで逃亡する人もいるだろう。もう結果を聞きたくない、彼とは関わらないようにする、といった選択である。

また「どうせ割れるんでしょ。さっさと割りなさいよ」と諦め、やさぐれることで、恐怖を感じないようにしようとする人もいるだろう。例えば彼氏と幸せになる未来を信じるのが怖くて、「どうせ振るんでしょ。べつに期待してない」といった態度を取る人である。自ら風船を割りにいくのとほとんど同じで、割られるほうへ割られるほうへと導いていると言える。

もちろん、怖いから風船をそもそも膨らまさない、という人もいる。リスクをはらんだ幸福には向かっていかない、計算できることしかしない、という人である。

とにもかくにも、ネガティブに考えてしまう人にとって、幸福というのは膨らんだ風船のように恐ろしいものである。「風船は膨らむことよりも割れないことのほうが大事」と考える人が少なからずいるし、それはたいがいの人にとって理解不能なロジックでもある。

怖がるなとは言わないが、未来に期待しないと始まらないのも確かだから、せめて風船を割ろうとしている自分に気付き、自滅だけでも防ぎたいものである。

(感想があればこちらへ advice@rennai.ac